essay

日本人の歩き方

 僕は歩く時、右肩が少し下がっている。普通に立っていても、右肩が少し下がっている。背骨が右に曲がっているからだ。小学生の時にはすでに曲がっていた。それが理由で健康優良児の学校代表の最後の審査で落ちた。教科書や参考書を詰めこんだ重い鞄を毎日持って学校や塾に通ったせいだと言われた。本当だろうか? それにしても、健康優良児なんて言葉、今は聞かない。体が健康であることが偉い時代だった。今は心が健康であることの方がめずらしくて大事なのかもしれない。

 いつでもみんなに見られている気がして、どうやって歩いたらカッコいいのかということばかり考えていた10代。何も考えず、仕事に追われて猫背で歩いていた20代。10キロも体重が増え、贅肉を抱えて歩いていた30代。やっと自分の体の健康やスタイルを考えるこの歳になってみて、ふとまわりを見回してみると、なんとも歩き方の見苦しい人が多いことに気づく。

 背中が丸まっている人、がに股の人、内股の人・・・いろいろだけど、僕が最近特に気になるのは、足を引きずって歩く人。しかも学生や若い人に多い。草履をひっかけて歩いているわけでもないのに、どうしてそうなるのだろう。革靴で足を引きずるとうるさくてしかたない。思わず顔をにらんでしまう。
 それは日本の履き物の歴史、文化だとおっしゃる方がいる。そうではないと思う。いわゆる若い年頃特有の「かったりぃ〜」という自己アピール、コンサバのかっこ悪さに対する自意識過剰行為だと思う。きものを着て、草履をはいて、それはそれはきれいに歩く方はたくさんいらっしゃる。
 もうひとつ気になるのが、女の人の内股。女の子は小さい頃から膝を広げるなと教えられる。まあ、それはそれでいいのだが、膝頭をつけようとするからカッコ悪い内股になる。股の下側をつけるようにすればカッコよくなるし、膝も開かないのに。まあ、最近は足をパカーっと広げて座っている女子高生もたくさん見るが、それは問題外。

 骨格の違いや、洋服の歴史の違いは確かにあるのかもしれないが、欧米人に比べて日本人は歩き方が下手だ。というより意識がなさすぎる。小学校で歩き方の授業をとりいれてほしい。デューク更家先生にご登場願いたいっ! 「地球の歩き方」を読む前に、日本人は自分の歩き方をどうにかしなければならないと思う。
 歩く姿勢に気をつけると、体全体の筋肉が引き締まる。歩いているだけで腹筋もつくし、ふくらはぎも丈夫になるし、肩凝りも治る。別に自分ができているというわけではないが、ちょっと意識して歩くと、そんな気分になる。勘違いでもいいじゃないか。
 人の振り見て我が振り直せ。まずは他人の文句を言わず、自分が努力しなければ。
 歩く姿や立ち姿の魅力的な人になりたいと思う。人生もきっと同じなのだろう。

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