作詞家? へー! じゃあ、旅に出て書きためたりするんですか?
いいえ。
でも、やっぱりいろんなところ見て、自然を肌で感じた方がいいでしょう。
そりゃあそうですが。
どんな歌手に提供してあげるんですか?
提供というより、いわゆる受注生産なので、注文があれば誰でも。
え!? そうなんですか? 作詞家が書いて提供してあげるんじゃないんですか。
違います。
書くときって、なんか音楽聴いたりしながら気分高めるんですか?
いや、なにも聴きませんし、聴くとしても詞をつける曲です。
ん? どういう意味? 曲が先なんですか?
はい、ほとんどそうです。
えー、そうなんですか。でも、いろんな体験しないといけなくて大変ですよね。全部ご自分の体験ですか?
いえいえ、そんな。全部体験していたら、いくつ体があっても足りません。
なるほど。じゃあどうやって思いつくんですか?
それは人の話を聞いたり、本や雑誌を読んだり、テレビや映画を見たり、いろんなことにインスパイヤされて・・・。
いくつか作品を読ませていただきましたけど、澤地さんの考え方がなんとなくわかったような気がします。
いや、自分の考えではなく、この歌手だったらこういうふうに表現するといいなあと思って書きますし、プロデューサーやアーティスト、レコード会社、事務所とどういう歌にするか話し合って、それを具体化するのが作詞家ですから、僕が書きたいことを書けるわけではありません。
へー、会社みたいですね。
ええ。音楽という産業、商業のなかで動いていることですから、企業と同じです。
そうなんですか。でも、どうやってテーマは思いつくんですか?
おまかせということもありますが、だいたい打ち合わせで決まります。
そこまで決まっているんですか?
ニーズにお応えするのが作詞家の仕事ですから。
へー。好きなことを書くんではないんですか?
違います。自分が好きなことを書けるのであれば、もっと違う作品になります。
というような会話を、今までに何度したことでしょう。一般の人の音楽や作詞家に対するイメージはこんな感じなんですね。
でも、いちいち目くじらをたてていても仕方ないですし、そんなふうに思われていることをさらりとかわしていく職業が作詞家なのでしょう。一般の方が、音楽やアーティストに抱く夢も大事にしなくてはなりません。
誰がこの歌を書いたかではなく、歌手の思いがそのまま書かれているような、聴く方の気持ちがそのまま歌われているような、そんな詞を書けるようにこれからも精進していきたいと思います。