社会に出てつくづく思うのは(社会に出てからもう30年以上経つのでいまさらという感じだけど)、資料作りやプレゼンテーションの大切さ。言いかえると資料作りやプレゼンテーションのむずかしさ。内容はもちろんだが、レイアウトや色の使いかたには毎回悩む。自分のことはかなり棚に上げて言わせてもらうと、日本人の資料は特に色の使い方が下手だ。海外、特に欧米の資料は(地域表現がかなり大雑把ですみません)、プロアマ問わず色使いがうまい。
色は自然との関係が強い。もっとも結びつきがあるのは太陽の光らしい。光が強く明るい地域で映える色、曇りや雨の多い地域でクールに見える色、やさしい光が包む地域でなじむ色など、その地域の環境に合う色というのがあるものだ。太陽光の波長によって色の見え方も違うし、人種による目の色素の違いや文化の違いによっても色の見え方や使い方は違う。
日本には和色と言われる伝統色がある。小豆色、黄金色、山吹色、琥珀色、群青色など、聞き覚えのある色もあるが、聞いたこともないような粋な名前のついた色見本は眺めているだけでも楽しい。そして、たぶんこの和色が日本の光や風景や歴史には合う色なのだろうと、つくづく思う。
さて、色にはトーンというものがある。色の明度と彩度をあわせた考え方で、これを理解していると色を使ったコミュニケ―ションを円滑に図ることができる。ビビッドな色とグレイッシュな色を一緒に使うのはあまりいただけない。トーンをそろえるだけで、きれいにまとまる。
もうひとつ、資料づくりで使っていい色は4色まで。素人はできれば3色まで。やたらといろいろな色を使って、しかもトーンのそろっていないケースをよく見るが、いったいなにが大事なのかさっぱりわからず、目がチカチカするだけだ。
さらにもうひとつ、配色は色相環を見て選ぶこと。日本人はなぜか青と赤を使いたがるが、青の補色、引き立てる色は黄色やオレンジ。ユニバーサルデザインにも注意しながら、類似色、寒色、暖色を理解して選ばなければならない。
色の概念についてはぜひ学校でもっと教えてほしい。生まれながらに色のセンスを持っているひともいるが、我々のような一般ピーポーは、知識を得ることによってかなり資料の品質が向上し、社会生活に役立つと思う。
資料のフォント、レイアウト、余白などの話は省略するが、字は大きければ目立つとばかりにポイント数を上げ、言いたいことを紙面いっぱいにごちゃごちゃと書いてある資料のなんと多いことか。
ところで、プレゼン資料を作るソフトとしてスタンダードになってしまったパワーポイントは、どうしてあんなに使いにくいんだろうか? 環境設定をこまめに調整すればいいのかもしれないが、自動でいろいろやってくれちゃうのが、特にイラッとする。
文句ついでに言うと、エクセルで文章と表だけの資料をつくるひとの感覚がよくわからない。ワードでいいじゃん!ということがよくあるよね。ま、ワードも使いにくいけれど。
かなり脱線してしまったが、色の使い方については、歩き方(前にエッセイで書きました)と食べ方(ほんとは家庭の問題だけど)と笑い方(この件についてはまたいつか)とならんで、ぜひもっときちんと学校で教えてほしいなという話でした。