#12 3月 桜咲く |
「咲く」に複数をあらわす「ら」をつけて「さくら」。 そんな説もある桜は、春を象徴する花として、 古くから日本人に愛されてきた。 日本の古典で花と言えば桜を指し、数多くの歌に詠まれてきた。 日本最古の歌集と言われる万葉集にも桜を詠んだ歌がある。 和歌にも桜を詠んだものは多く、 俳句でも古くから春の季語とされてきた。 ソメイヨシノが特にそうであるように、 葉が出そろう前に花が咲きそろうので、 何もないところに花が咲くという強さを持つ。 春の雨と重なることもままあるが、 満開から一、二週間で花が散るという儚さを持つ。 この相反する二つの要素を持った美しい桜を、 日本人は命になぞらえて、花見、夜桜、花見酒となる。 夜桜見物にきたのか、花見酒の宴を見物にきたのか、 ふわふわと歩きながら、ふわふわと考え、ふわふわと夢を見る。 かたい蕾もかわいいし、初夏の葉桜もやさしいし、 でもやっぱり、ピンクの絨毯の頃、散り始めた花びらを肩に乗せ、 甘い春の風を感じて、誰かを想う夜がいい。 「サクラサク」と書かれた合格電報が来た時代は終わったけれど、 いつの時代も桜咲く便りはうれしいものだ。 今年も桜前線が北上している。 毎年気象庁が発表する「桜の開花予想日」と、 それを線で結んだ「桜前線」は、寒冷前線と違って、 春の訪れが足音をたてて日本を包んでいくようで、心温かい。 人生まだまだ道半ば。 そりゃあおかしいよと思うこともみんなひっくるめて、 人間やってることが、そろそろおもしろくなってきた。 |